<< November 2008 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>

スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

スポンサードリンク * - * * - * -

「厠」・「厨」


 写真は「ヒメアカタテハ」。11月18日に撮影しました。この蝶は成虫で越冬するそうです。まさしく「冬の蝶」ですが、けっこう元気に飛んでいました。場所は、隅田川の護岸裏の空き地です。(「ヒメアカタテハ」は、このブログの07年5月14日の記事にも、我が家の庭での写真が出ています。)

<「厠」・「厨」>
 ことの起こりは、今回のブログ句会の「選句と評」です。謳外さんの句、9「晩秋や厠の外に鳩歩く」に、たみこさんから質問が寄せられました。
 『なぜ「厠」なのでしょうか? 厠などという言葉を使わなくても…と思うのですが。』
 これに、誰からも回答・意見がありませんでした。そこで、私(泰二)は、私見をたみこさんにメールしました。私は「なぜ『厠』などという古い言葉を使うのか」という質問だと思って、そのことに対する私見を述べたのです。それは、私の誤解で、御質問は「なぜ『厠』などという尾籠な場所を詠むのか」ということだと、メールの遣り取りで分かったのですが、私にとっては、いろいろ考える良いきっかけになりました。
 <俳句では、なぜ「厠」・「厨」などと、古い言葉を使うのか。>
 以前、俳句では、「ガラス」と言わず、「玻璃(ハリ)」と詠むことが多かったのですが、雅に過ぎるという意識が強くなってきて、今では、特殊な狙いの時以外には、「ガラス」と詠むようになっています。しかし、「厠」「厨」は相変わらず、このまま使われることが多いようです。なぜでしょう。
 そこで、「厠」と言わないのなら、なんと言えば良いか考えました。「トイレ」「便所」「御不浄」「お手洗い」「WC」「雪隠」・・・。どれも、俳句で使うにはしっくりしません。生々し過ぎたり、古めかし過ぎたりです。(禅寺を詠む時には「東司(トウス)」がけっこう使われていますが。)
 「厨」も、「キッチン」「台所」「お勝手」・・・どれも、しっくりしません。「調理場」「炊事場」「厨房」となると、食堂・レストランなどのイメージです。
 そういう訳で、止むを得ず、「厠」「厨」を使っているのだろうというのが私の結論です。
 しかし、それでいいのかという疑問も湧きます。俳句という限られた領域だけで使われている言葉に頼っていたら、俳句は狭い範囲の人にしか通用しない普遍性のない文芸に止まってしまうのではないかという疑問です。
 他の例として「蝌蚪・カト」をあげてみましょう。「おたまじゃくし」は江戸時代には「蛙の子・カハヅノコ」「蛙子・カヘルコ」と詠まれていましたが、虚子が「蝌蚪」と詠んで以来、それが普通になってしまいました。しかし、中には、飯田龍太さんのように「あるときはおたまじやくしが雲の中」と詠んで、「蝌蚪」は使わなかった人もあります。
 そして、その龍太さんは、「厠」も「厨」も使っていないのです。「厠」は尾籠なので詠まなかったとも言えるのですが、「百戸の谿」に「凍光や帰省す尿を大胆に」がありますので、尾籠説は通らないでしょう。
 龍太さんは「蝌蚪」「厨」「厠」などについて、改めておっしゃったことはありません。しかし、言葉に厳しい人でしたから、理論として唱えなくとも、感覚的に拒否なさったのではと思えます。
 私も「蝌蚪」は使いませんが、「厨・厠」は便利なので、つい、使ってしまいます。しかし、これからは、使うにしても、よくよく考えてからにしたいと思います。

 
taiji-m * - * 16:34 * comments(0) * trackbacks(0)

第十一回ブログ句会・選句と評


写真は「アゲハの交尾」です。上が雌。下のぶら下がっているのが雄です。10月7日、隅田川の護岸の裏の空き地で撮りました。(泰二)

<第十一回ブログ句会・選句と評>

 選は☆で示しました。△は佳作、?は質問です。
< >
は作者、( )は評者です。
 ※今回の句会作品、選、評について、感想・質問などお寄せください。

<選句と評>
<白い鴉>
1馬肥ゆる引退したる競走馬
2蛇穴に入る城壁の殺気かな    
3鵯の咥えて飛びし藁の屑
☆2、う〜む、確かに殺気を感じる。(ウーフ)
☆3、鵯は赤い実や熟柿を餌にします。藁の屑で晩秋らしさが出ました。(けいこ)

<ウーフ>
4老犬とともに見にゆく秋夕焼
5雁の列通夜のお寺の上往けり
6椋鳥の声降り積もる日暮の樹
☆4、若い犬でも悪くないが、老犬と見る秋夕焼けに一層魅力を感じた。(謳外)
☆6、そういう樹が、うちの近くにも確かにあります。(たみこ)
☆6、夕暮の樹から数多の椋鳥の声。中七は「声降ってくる」くらいか?(泰二)

<謳外>
7残る虫女は命輝かす
8鶴来る人の都合を蹴散らして
9晩秋や厠の外に鳩歩く
☆7、虫の秋の暮れの美しい音と死に際の女の命の比較が面白い。(狛犬)
☆7、ん!?(句猫)
☆9、いい取り合わせです。しみじみ。(土曜日)
△9、晩秋、鳩歩く、は好きなのですが、なぜ「厠」なのでしょうか? (たみこ)
[ 昭和の時代の日本家屋という感じはしますが、 厠などという言葉を使わなくても…と思うのですが。(たみこ)]

<けいこ>
10寝る猫に屋根の日速し冬隣
11塀越ゆる尾のまだ垂るる穴まどひ
12しじみ蝶荒れたる草に紛れけり
☆10、「速し」ではなく「早し」かと。(土曜日)
☆11、俳諧味が垂れる尾に溢れてる。(ウーフ)
☆12、メルヘンチックで情景が目に浮かぶ。(ウーフ)
☆12、「シジミ蝶」と「荒れた草」で、イメージが沸きます。(たみこ)
☆12、しじみ蝶と荒れ野の模様が何となく似ているようだ。(狛犬)
☆12、色合いが晩秋らしいと思いました。でも、季語はなんでしょうか?(句猫)
△12、晩秋の蝶の侘しさは出ている。秋の季語がないので御工夫を。(泰二)
※12、後で秋の季語のないのに気付きました。末枯や草に紛れし蜆蝶・では?(けいこ)

<狛犬>
13枯葉踏み物知り顔に急ぐ猫
14甲羅干す亀への日差し冬間近
15訃報ありすだく虫の音途絶えけり
☆13、秋の猫勝手知ったる地の利かな。(白い鴉)
☆14、中七が舌足らずですが。(土曜日)
☆15、季語が付き過ぎでは無いかとも程好い取合わせだとも感じます。(謳外)
☆15、哀しみの深さが感じられる。(うーむ)

<泰二>
16晩秋の夕日見てゐる駝鳥かな
17突堤をつつむ夕映秋燕
18空澄むや百の柱の昇り竜
☆16、駝鳥が良い。故郷を思い出しているのでしようか。(白い鴉)
☆16、ユーモラスな駝鳥の横顔に却って晩秋の淋しさを感じました。(けいこ)
☆16、駝鳥がお手柄です。(土曜日)
☆16、シルエットを想像して良いなと思いました。(句猫)
☆16、動物園でしょうか、シンプルな良さを感じました。(謳外)
☆17、端整で詩情のある句。夕映えと秋燕の取り合わせがよい。(けいこ)
☆18、百匹の龍が天に昇る姿を想像するとわくわくします。(白い鴉)
☆18、寺院の天井画か?柱がよく分からない。屋根を組む柱?(うーむ)

<土曜日>
19蜘蛛の巣に蜘蛛ひからびて秋の暮
20饒舌の河馬眠り込む冬近し
21残菊やとつぷりと聴く夜のタンゴ
?20、「饒舌」と「河馬」はかなり遠い印象があります。作者の意図は?(うーむ)
△21、残菊とタンゴの取合が新鮮。中七、特に「とっぷり」は説明臭い。(泰二)

<たみこ>
22秋の蜂光の中を往来す
23みの虫の身の上話風の夕
24ランドセル駆けていく道もずの声
☆22、句の形の良さで選びました。初秋の句としても通るので悩みました。(けいこ)
☆22、簡潔ゆえの気高さ美しさ。(うーむ)
☆22、物悲しさと暖かさを感じました。(句猫)
☆22、このままでは初秋。下五、「漂へり」「彷徨へり」など工夫を。(泰二)
☆23、上五中七面白く音も良い。浮○者の比喩?下五が今一つか。(うーむ)
☆23、蓑虫と身の上の語呂合わせはわざとらしいが、面白い。(狛犬)
☆24、無邪気な子供の歓声と鵙の鋭い声との対比の妙。(ウーフ)
☆24、小学生にもずの声、びしっと決まって居ると思いました。(謳外)
☆24、「鵙」は切迫の情と合せる事が多い。ここでは単に明るさ?(泰二)

<うーむ>
25母のひざ猫と子とりあふ夜長かな
26巨大都市ゆるりと渡る鰯雲
27賛美歌の薔薇窓のぞく小鳥かな
☆25、ほのぼのとした家族団欒の様が眼に浮ぶようです。(白い鴉)
☆26、六本木あたりの近代的なビルの間から鰯雲を仰ぎ見ている感じです。(たみこ)
☆26、墓場のような巨大都市の上の鰯雲の様子が目に浮かぶ。(狛犬)
△27、薔薇窓はステンドグラス?薔薇の這う窓?「のぞく」は不要では?(泰二)

<句猫>
28鹿の声正倉院展絹の道
29鵙の声水をたたえる仁徳陵
☆29、仁徳帝は苛烈だったという説あり。中七「水を湛へし」では?(泰二)
taiji-m * ブログ句会 * 17:47 * comments(0) * trackbacks(0)

第十一回ブログ句会・出句集


 写真は「霞ヶ浦の帆引船」です。私の俳句仲間、横浜ぬかご句会の雨宮忠男さんの提供です。撮影は10月17日、地元の人も「今年で一番良い天気」という状態だったそうです。

<第十一回ブログ句会・出句集>

 下の作品の中から良いと思うものを4句選んで、その番号をメールで送信してください。
(それぞれ30字以内の感想・批評を添えてください。)
(選句は、出句した方に限ります。)
☆選句期限 11月10日。

 ◎全ての選句をまとめ、このブログに発表します。作者名(ブログ上の仮名)も添えます。感想・批評も評者名(同前)を添えて全て発表します。

<出句集>
1馬肥ゆる引退したる競走馬
2蛇穴に入る城壁の殺気かな    
3鵯の咥えて飛びし藁の屑
4老犬とともに見にゆく秋夕焼
5雁の列通夜のお寺の上往けり
6椋鳥の声降り積もる日暮の樹
7残る虫女は命輝かす
8鶴来る人の都合を蹴散らして
9晩秋や厠の外に鳩歩く
10寝る猫に屋根の日速し冬隣
11塀越ゆる尾のまだ垂るる穴まどひ
12しじみ蝶荒れたる草に紛れけり
13枯葉踏み物知り顔に急ぐ猫
14甲羅干す亀への日差し冬間近
15訃報ありすだく虫の音途絶えけり
16晩秋の夕日見てゐる駝鳥かな
17突堤をつつむ夕映秋燕
18空澄むや百の柱の昇り竜
19蜘蛛の巣に蜘蛛ひからびて秋の暮
20饒舌の河馬眠り込む冬近し
21残菊やとつぷりと聴く夜のタンゴ
22秋の蜂光の中を往来す
23みの虫の身の上話風の夕
24ランドセル駆けていく道もずの声
25母のひざ猫と子とりあふ夜長かな
26巨大都市ゆるりと渡る鰯雲
27賛美歌の薔薇窓のぞく小鳥かな
28鹿の声正倉院展絹の道
29鵙の声水をたたえる仁徳陵
  (以上です。)
taiji-m * ブログ句会 * 21:49 * comments(0) * trackbacks(0)
このページの先頭へ