<松崎泰二句集・第三部>
芋やうかんあんこ玉など寒明くる
ぶらんこに老人のゐる桜かな
水鳥の額のこぶの日永かな
夏果てや丘の向うのアドバルン
たんぽぽの茎短くて潮の香
干梅のひとつひとつの面構へ
繭のうち蚕の動きゐる良夜かな
ひぐらしや谷くまぐまの石ぼとけ
ボタン屋のボタンの数の夜長かな
孑々の嗤つてゐるのかも知れず
遠足の列遮断機が下りてくる
海亀の子にあかつきの沖明り
末枯れて風のふうせん葛かな
薔薇の刺冬将軍がやつてくる
渓筋の空ひらけたり時鳥
熊笹のおくの水音半夏生
みぞそばや雨脚やはらかくなりぬ
四十雀来てゐるひかり冬木立
銭湯の天井こだま春隣
我が影と欅の影と冬深し
接木して大きな月の上りけり
花あんず鳥のことばの溢れたる
陽炎や隠れんばうの鬼が来る
鉄塔の脚据わりゐる冬田かな
上げ潮の河口八十八夜かな
秋澄むやうす紅色の鉋くづ
御飯よと呼ぶ声のする返り花
不足なき齢と思ふ葛湯かな
遠足の去りたるおたまじやくしかな
丘の上の音楽ホール遅桜
灯取虫大きな影を連れてくる
神職の大きな箒椎の花
秋の蝶音立てて雨降つてきし
砂浜に波くりかへす良夜かな
肺衰へて冬空の奥の紺
あらたまの気息に充ちて一走者
我が影を踏みゆく車寒の入
肺病むや並びて太き冬の幹
冴え返る桶の底なる鰈の眼
紋白蝶仮眠してゐるガードマン
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
※<孫のための註・抜粋>
「渓筋の空ひらけたり時鳥」
若い頃、よく丹沢の沢登りをした。時鳥の威勢のよい声。
「銭湯の天井こだま春隣」
子供の頃、銭湯(浅草)でよく遊んだ。天井が高く、反響が快かった。
「秋澄むやうす紅色の鉋くづ」
子供の頃、家は桐箱屋だった。職人仕事に憧れがある。
「我が影を踏みゆく車寒の入」
町を歩いていて自動車が私の影の上を通った。轢かれた感じ。
<選句と評>
<♭>
1秋風やまだ半袖と戯るる
2捨案山子声無き路の彼方かな
3昼の虫儚き生よ我もまた
☆2、人の居ない淋しいところの捨て案山子、なお淋しいですね。(杏)
☆3、「我もまた」はちょっと感傷的すぎるのでは?(狛犬)
☆3、昼の虫に儚さを感じていることに共感できた。(知足)
☆3、人生観に共感しました。(土曜日)
<小波>
4声掛くる相手案山子のほかはなし
5匂ひなき野辺を色なき風渡る
6鈴虫の鈴を収めて諍へり
☆4、何か突き抜けた感のある孤独。(♭)
☆4、稔り田の案山子に声を掛け乍ら見回る農夫の微笑ましい感じの句。(鴉の子)
※6、「鈴虫」。個々の虫は題意を越えています。(世話人)
☆6、「鈴を収めて」が巧み。(梓)
☆6、着眼点が新鮮。中七が別のいい方だと更によかった。(風花)
<白い鴉>
7高原の色なき風のレストラン
8踏切や案山子に太き足二本
9山荘の五右衛門風呂や虫の闇
☆7、季語が効いていると思います。(友遊)
☆7、リズムが良い。一緒に楽しみたい気分になる。(紙風船)
☆7、取り合わせがいい。無季でしょうか。(土曜日)
△7、おしゃれな句ですね。感じは捉えられていると思う。(風花)
△7、高原・レストランの彩どりが「色なき風」を活かしている。(泰二)
※「色なき風」については、欄外の「一言」を御覧下さい。(世話人)
☆8、案山子の太い足なんてえ。(土曜日)
?9、「山荘」でないほうが良いと思うが?(奴)
<八目>
10広島に遺る人翳秋の風
11子の作る脚二本ある案山子かな
12妹の持たせて貰ふ虫の籠
☆12、兄弟の景がよくみえます。兄を慕う妹の可愛らしさ。(友遊)
☆12、兄妹の力関係がよく見えてきた。(知足)
△12、良いところを詠んでいるが「虫籠」とすべきでは?(奴)
△12、内容は申し分なし。下五の「の」が取れればなぁ。(泰二)
<狛犬>
13用済みの案山子に糞するカラスかな
14虫時雨痛む歯こらえ夜具の中
15匂いせぬ秋風を嗅ぐ老いた犬
☆14、虫時雨さえ疎ましいですね。ユーモアとペーソスを感じた。(季彩)
☆15、季節の訪れは「老いた犬」にも。(♭)
☆15、秋風を嗅ぐ、なるほど。風を嗅ぐ犬いいですね。(杏)
<季彩>
16苔石や一寺を守る昼の虫
17保育児の母待つ窓や秋の風
18捨案山子でも流行の細き眉
☆16、寺の静謐な感じが出ている。(八目)
☆17、心細げな感じが秋の風に良く照合している。(八目)
☆17、共働きの母を待つ子供の表情が見える様です。(白い鴉)
☆17、日々懸命に生きている母子、「秋の風」に季の移ろいとやすらぎ。(梓)
☆17、迎えの遅い児の窓を見る眼差しが愛おしい。(小波)
☆17、一際迎えの遅い母親を待つ子供の気持ちが秋風に出ている。(若葉)
<柊>
19昼の虫象の花子は老いにけり
20灯を消して沈みゆくなり虫しぐれ
21釣人のひとりひとりへ秋の風
☆19、「昼の虫」がいいです。感謝です。(友遊)
☆19、花子に託した自分の人生感か。(奴)
☆19、ひっそりと鳴く昼の虫に老いた花子が目に浮かぶ、上手い。(紙風船)
☆19、逝く秋の寂しさが伝わってくる(若葉)
☆19、「昼の虫」がいい。不活発になった花子を暗示して、情を誘う。(風花)
☆19、季語が良い。下五の詠嘆も内容を活かしている。(泰二)
☆20、物思いか、眠りか、静まっていく心。(うーむ)
☆21、ぽつんぽつんて座っている釣り人の寡黙な背中が見える。(梓)
☆21、釣り人の後ろ姿が見えてくる。(奴)
☆21、釣果の多少に関わらず釣人の孤独な背が並ぶ。(小波)
☆21、秋の風の感じが出ている。「へ」が気になります。「の」では?(紙風船)
<鴉の子>
22夕案山子望郷の胸熱くせり
23秋風の一管に添ふ野外能
24昼の虫風の間合ひを鳴きにけり
☆23、薪能の幽玄さを感じました。(青子)
☆23、薪能は今頃がいいですね。(句猫)
☆23、季語が、下五で秋の風となれば一層よい。秋の風が一管に澄む。(柊)
▽23、「野外能」は「薪能」のほうがいいのでは?(友遊)
☆24、「昼の虫」らしさがでている。(梓)
△24。昼の虫の感じが捉えられていると思う。(風花)
△24、(友遊)
<若葉>
25法螺貝の音色に下山秋の風
26山門の灯しの高さ虫鳴けり
27学田に睨みをきかす案山子かな
☆25、秋風の中登山、月山?大峰山かな?(季彩)
☆26、寺の威厳が伝わってくるような表現だと思う。(知足)
☆26、景がみえる。「高さ」をいったことで、虫の鳴く空間が感じられる。(風花)
☆27、生徒の応援の案山子でしょう、睨みの効いた楽しい光景です。(杏)
<泰二>
28猿山の猿それぞれの秋の風
29捨てらるる案山子の大き眼かな
30湯上りの髪かはく間の虫の声
☆28、猿山は人間社会の縮図。様々な秋の表情が浮かぶ。(うーむ)
☆28、風をそれぞれに楽しんでる感じがしました。(句猫)
☆29、哀しみや諦めの宿った眼。何も映さない眼は青空を見てる。(うーむ)
△29、大きな眼が捨案山子のさびしさを訴えている。(柊)
☆30、清涼な感じのひと時。(♭)
☆30、日常のさりげない時間を楽しんでいる様子が出ている。(紙風船)
<青子>
31秋風や流鏑馬武者の色流る
32おおかたの案山子丸禿何冠る
33ざわめきも胡弓も遠く虫時雨
☆33、遠くの胡弓に響和する虫時雨、少し淋しい感じ。(季彩)
<土曜日>
34血脈を承けて生まれて秋の風
35よく見れば皆変な人野の案山子
36尋ね来て最後は一人虫の声
☆34、頑張れ政治家。(白い鴉)
△35、おもしろい。ちょっと不気味でもある。(風花)
<奴>
37らかんさま目をつぶりをり虫時雨
38伊達殿の案山子街道晴れ渡り
39噴水を遊ばせてゐる秋の風
☆37、うす暗い木下の数多の羅漢像。虫の音の盛んなさまが浮ぶ。(鴉の子)
☆37、うるさいと思っているのでしょうか?聞入っているのでしょうか?(句猫)
☆38、62万石の仙台平野。一面の稔田に並ぶ案山子。豊かな気分の景。(鴉の子)
☆38、秋晴れの下街道に立つ案山子コンクールか?楽しそう。(白い鴉)
☆38、伊達領で行われる案山子祭の景でしょうか。下五が気持ちがいい。(若葉)
☆38、細かいことを言わず、明るく言い放ったのが内容と合致している。(泰二)
☆39、涼しさを演出する必要がなくなった噴水への秋風の慰労か。(狛犬)
☆39、夏から秋へ公園の主役交代。遊ばせてに皮肉な面白さ。(小波)
☆39、「遊ばせている」が良い。(八目)
△39、「遊ばせてゐる」が良かったです。(季彩)
<知足>
40秋風や散歩道にも個性出る
41捨案山子定年思う人もあり
42座禅組み風呂に浸かれば虫時雨
△41、捨案山子と定年の取り合わせが良い。(白い鴉)
<風花>
43ダンボールの家や色なき風とほる
44鴉ども髭の案山子をつつきけり
45ごみ捨てに出てたたずめり虫の闇
☆44、鴉には、髭の威厳も通じない。俳諧の面白さを感じた。(柊)
☆45、真夜中の最後の仕事に心の和むひと時。(白い鴉)
☆45、どんなストレスを抱えてか。「佇む・虫の闇」に心の暗さが。(泰二)
<うーむ>
46秋風やそっとなまえを呼んでみる
47戦闘機飛びたてばまた虫時雨
48おひとよし案山子の肩の雀かな
☆46、相手について、いろいろ想像した。(♭)
☆46、カナシイです。(土曜日)
☆47、飛行機の音で聞こえなかった虫の声が聞こえてくる状況が浮かぶ。(狛犬)
☆47、基地近く、あるいは戦中の記憶か。平和への願いを感じました。(青子)
<杏>
49秋風に腰の工具の音のして
50泣いている迷い子の手に虫の籠
51短くも晴れ間はれまの虫時雨
☆49、仕事の場が詠まれていて、好感。(青子)
△49、金属の音が秋風に、キラリと光る工具が秋に相応しい。(うーむ)
△49、秋風と工具の音の取り合わせは新鮮。どこかに切れが欲しい。(泰二)
?49、「秋風に」を「秋風や」として、切ったらどうでしょうか?(若葉)
<紙風船>
52方丈の板の艶やか秋の風
53睡る子のこぶしふるへて虫時雨
54虫の音のなじむ交番更けにけり
☆53、虫の声以外に音がない静かな空気が想像できた。(知足)
☆53、やっと眠ったのに...実感です。(季彩)
☆54、事件の無い土地柄、虫の音を聞く余裕も。「なじむ」がいい。(小波)
☆54、ぽつりと建っている交番の夜更 。虫の音が尤もふさわしい。(鴉の子)
☆54、虫の音の定着した交番の静けさが伝わってくる。(若葉)
△54、目立たない町の目立たない交番。平穏・温くもり・安らぎ。(泰二)
▽54、虫の「音」ではなく「声」ではないでしょうか?(友遊)
<梓>
55神の田の白づくめなる案山子かな
56秋風や我がこといつも後回し
57月出でし縁に虫籠だしにけり
☆55、神に対する雰囲気がでている。(奴)
☆55、神聖なお米ですね。(句猫)
☆55、中七が神の田の厳かさを表現。完成度の高い句。(柊)
△56、ちょっと恨みがましいが、共感大。主婦の宿命。(うーむ)
△56、主婦の実感。秋風に一抹のさびしさを感じる。「わが」では?(柊)
☆57、月に虫を鳴かせる風情が良い。ただ、「出でし」は「出し」では?(八目)
※57、「出でし」は「いで+し」だから「で」は必要。「出し」だと「でし」。(世話人)
<友遊>
58かき上げて見せる横顔秋の風
59美容室出でて色なき風の音
60秋風やバッグを肩にかけなおし
☆60、冷たい秋風を受けて身を引き締める動作の一つか。(狛犬)
☆60、風をふと感じ肩のバックをしっかり掛け直すとは、見事。(杏)
<句猫>
61虫時雨卸市場の照明灯
62秋風や異国に渡るファラオ像
63案山子たつコーディネートに靴はなし
☆61、昼間の喧騒とは違う夜の静かな空間がみえます。(友遊)
☆61、仕舞の早い卸市場の夜のさまがよく感じられる。(青子)
☆61、昼の賑やかさと対照的な卸市場の夜。虫時雨が利いている。(柊)
☆61、「照明灯」で却って暗さが出ている。がらんとした空間の広さも。(泰二)
☆62、王のありようを秋風が象徴している。(奴)
☆62、黄金のファラオ像、エジプトは、秋に合う。印象的な光景。(うーむ)
☆62、詩的ロマンを感じる。とりあわせもいい。色彩的でもある。(風花)
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<世話人の一言>
題の一つ、「色なき風」ですが、最近使われ始めたものです。歳時記の「秋風」に傍題として「素風」が載っています。これを和風に言い表したものです。五行説では四季に色が割り当てられています。
青春・朱夏・白秋・玄冬(「玄」は黒)。この白を無色と捉えたのが「素風」です。だから、「秋風」=「素風」=「色なき風」なので、実際に色が無いわけではないのですが、こういう言葉を使うからにはやはり「色なき」の部分のイメージが活きるように使ってほしいものです。「玉堂の画室色なき風とほる・清水衣子」
<出句集>
1秋風やまだ半袖と戯るる
2捨案山子声無き路の彼方かな
3昼の虫儚き生よ我もまた
4声掛くる相手案山子のほかはなし
5匂ひなき野辺を色なき風渡る
6鈴虫の鈴を収めて諍へり
7高原の色なき風のレストラン
8踏切や案山子に太き足二本
9山荘の五右衛門風呂や虫の闇
10広島に遺る人翳秋の風
11子の作る脚二本ある案山子かな
12妹の持たせて貰ふ虫の籠
13用済みの案山子に糞するカラスかな
14虫時雨痛む歯こらえ夜具の中
15匂いせぬ秋風を嗅ぐ老いた犬
16苔石や一寺を守る昼の虫
17保育児の母待つ窓や秋の風
18捨案山子でも流行の細き眉
19昼の虫象の花子は老いにけり
20灯を消して沈みゆくなり虫しぐれ
21釣人のひとりひとりへ秋の風
22夕案山子望郷の胸熱くせり
23秋風の一管に添ふ野外能
24昼の虫風の間合ひを鳴きにけり
25法螺貝の音色に下山秋の風
26山門の灯しの高さ虫鳴けり
27学田に睨みをきかす案山子かな
28猿山の猿それぞれの秋の風
29捨てらるる案山子の大き眼かな
30湯上りの髪かはく間の虫の声
31秋風や流鏑馬武者の色流る
32おおかたの案山子丸禿何冠る
33ざわめきも胡弓も遠く虫時雨
34血脈を承けて生まれて秋の風
35よく見れば皆変な人野の案山子
36尋ね来て最後は一人虫の声
37らかんさま目をつぶりをり虫時雨
38伊達殿の案山子街道晴れ渡り
39噴水を遊ばせてゐる秋の風
40秋風や散歩道にも個性出る
41捨案山子定年思う人もあり
42座禅組み風呂に浸かれば虫時雨
43ダンボールの家や色なき風とほる
44鴉ども髭の案山子をつつきけり
45ごみ捨てに出てたたずめり虫の闇
46秋風やそっとなまえを呼んでみる
47戦闘機飛びたてばまた虫時雨
48おひとよし案山子の肩の雀かな
49秋風に腰の工具の音のして
50泣いている迷い子の手に虫の籠
51短くも晴れ間はれまの虫時雨
52方丈の板の艶やか秋の風
53睡る子のこぶしふるへて虫時雨
54虫の音のなじむ交番更けにけり
55神の田の白づくめなる案山子かな
56秋風や我がこといつも後回し
57月出でし縁に虫籠だしにけり
58かき上げて見せる横顔秋の風
59美容室出でて色なき風の音
60秋風やバッグを肩にかけなおし
61虫時雨卸市場の照明灯
62秋風や異国に渡るファラオ像
63案山子たつコーディネートに靴はなし
<選句と評>
<小波>
1団栗のことばころがる掌
2形なきものは壊れず秋灯
3秋立つやかすかに見ゆる風のいろ
☆1、一つ一つの団栗、それぞれの言葉が聞こえる。(泰二)
☆1、団栗の言葉に耳を傾ける作者。誌的想像をかきたてられる。(風花)
△1、(友遊)
△2、(友遊)
☆3、色のない風に色を付けたところが面白い。(狛犬)
☆3、季節の変化を風の色で表現しているのに感心した。(知足)
☆3、古今和歌の本歌取りでしょうか。端正な句です。(土曜日)
<白い鴉>
4秋立つや影を重ねし船溜り
5陶製の釦いろいろ秋ともし
6どんぐりや硬貨を洗ふ水の音
☆4、季節の移ろいが見える。(紙風船)
☆4、影から、船溜りの水の色も連想できました。(青子)
△4、整った句で誌的情緒がある。既に詠われているような気がする。(風花)
△4、(奴)
☆5、陶のぬくさと秋灯がひびきあう。色彩的。(風花)
☆5、陶のもつぬくもりと手製のおもしろさが秋ともしにぴつたりです。(柊)
☆6、鎌倉の銭洗い弁天か、山奥の静かさが出ている。(奴)
<♭>
7秋立ちて最小限の人となる
8秋灯に過ぎ去りし日々影光
9団栗の各々の顔我を見し
<八目>
10行く足のはこびの遅き今朝の秋
11一人にはひとりのくらし秋灯
12団栗や昔はどこも子沢山
☆11、「ひとり」が日々背負ってゆく「くらし」の重さよ。(♭)
☆11、慎ましいが平穏な暮らしがうかがえる。(梓)
☆11、上五中七、どこかにありそうなフレーズですが、秋の気分です。(土曜日)
☆11、類句がありそうだけど秋灯がよく合っている。(紙風船)
☆12、素直な連想を頂戴しました。(土曜日)
☆12、(鴉の子)
☆12、野放図に転がる団栗を見ての感慨の一句で面白い。(若葉)
△12、「どんぐり」と「子供」は一寸つきすぎか?(奴)
<狛犬>
13秋の灯や亡き母見たり暗がりに
14秋の灯や財布の底の銭数え
15孫等去り団栗一つ残りけり
<泰二>
16立秋や音立てて噛む香の物
17どんぐりで終る団栗ばかりかな
18秋灯星のごとくにはるかなる
☆16、食卓にやすらぎ、日常のひとこまを捉えて好きな句。(梓)
☆16、新米に香の物!秋だなぁ〜と感じるひと時。(白い鴉)
☆16、空気も澄んでこりこりと音のする香の物が美味しそう。(杏)
☆16、秋めいた空気の中、香の物をかむ音の歯切れよさが伝わってくる。(里穂)
☆16、音が響いて静けさを感じます。(句猫)
☆16、立秋らしさを音で表現。おいしそうですね。(柊)
☆16、(鴉の子)
△16、「噛む」がなければ、申し分なし。(奴)
☆17、発想にこころを惹かれた。味わい深い句。(梓)
☆17、悲しいのだが笑ってしまう、そんな表情が浮かぶ句。(うーむ)
<季彩>
19今朝秋の厨に出羽の祈祷札
20これからが一人の時間秋ともし
21山の子に山の遊び場櫟の実
☆19、祈祷札と今朝秋のイメージが良い。(八目)
☆19、夏に詣でて戴いてきたものか。お札の白さが、秋を象徴している。(奴)
☆20、秋の夜長自分の時間を大切にしたい気持ちよく分かる(狛犬)
☆20、母・妻・嫁・パート・奥さん。役割から解放される自分の時間。(泰二)
☆21、自然の中でのびのび育つ子供の情景、「山の遊び場」が効いている。(梓)
☆21、作句に無理が無い。(八目)
☆21、(鴉の子)
<友遊>
22秋立つや朝の散歩の距離のばす
23秋たちてまた明日ねと別れたる
24秋立ちて潮風乾いてきたりけり
☆22、感じるだけではなく、具体的に反映させる秋。(♭)
<土曜日>
25どんぐりやいくつになっても虎フアン
26秋灯下買ふても読まぬ哲学書
27縁ひとつ切れて歳寄る今朝の秋
☆25、虎ファンは永遠に不動、不滅です!!(季彩)
※26、「買ふて」は誤り。正しくは「買うて」。(世話役)
△26、買っても積んだままの本は面白いが、「哲学書」はどうか?(奴)
☆27、「縁」を結び合い、「歳」を重ねてきた人だけが語れること。(♭)
<柊>
28塀に寝る猫そよぎをり今朝の秋
29一冊の本とラジオや秋ともし
30秋灯や戻りし家に音あらず
☆29、秋の夜長の雰囲気が伝わってくる。(若葉)
☆29、ゆったりと過ごす秋の夕べでしょうか。(句猫)
△29、季語とつき過ぎの感じがしますが。(季彩)
△29、秋ともしにぴったりの道具立て。ぴったり過ぎがマイナスにも。(泰二)
☆30、誰もいない淋しさが、自然に伝わってくるようだ。(知足)
<風花>
31秋立つや漂うてゐる蔓の先
32人を待つナイフとフォーク秋灯
33大どんぐり一つ呉れたる別れかな
☆31、風に吹かれて揺れている蔓の先。何故か侘しさを感じます。(白い鴉)
☆31、涼しい秋になり蔓も元気に触手を伸ばしている様子が見える。(杏)
☆31、蔓の先が漂うとなんで秋立つのかわからないが立秋だからだらう。(八目)
☆31、秋の始まりを空気の軽さに感じる繊細な句。下5句秀逸。(うーむ)
☆31、秋立つ頃の植物の特性が出てる。(里穂)
△31、よく見る風景ですが、中七が秋の淋しさを捉えています。(柊)
△31、「秋めくや」だったら☆。「立秋」は繊細さの他に潔さも含む。(泰二)
☆32、照明は絶対黄色。誰かに待たれること、待つことの幸せ。(うーむ)
☆32、中七の金属の質感が季語と合う。スマートな句。(柊)
☆33、童話を読むような物語の展開を感じる。(里穂)
<奴>
34立秋の月を掲げし森の梢
35クラス会果て秋の灯に帰りつく
36どんぐりの水面に落ちしこだまかな
☆35、クラス会の余韻と、秋灯のとりあわせに共感しました。(青子)
<杏>
37水底のごとき法堂秋灯
38立秋の僧連れてくる山の風
39秋立つや地球も少し傾けり
☆37、龍の睨む禅寺の法堂の静けさが秋灯しでほっとする様。(季彩)
☆37、法堂の静けさが良く出ている。嘗て対馬で、同様な景に出会った。(奴)
☆37、比喩に惹かれた。澄んだ静けさが遺憾なく表現されている。(風花)
☆37、上五が全体の雰囲気を良く出している。(泰二)
☆37、水底というたとえがすばらしい。(青子)
☆39、壮大な着眼点に惹かれた。(♭)
☆39、そんな気がしてきました。面白いです。(友遊)
<里穂>
40秋めくや川風とどく美術館
41筆跡に父との逢瀬秋灯下
42ふるさとや団栗の降る父母の墓
☆40、玉堂美術館でしょうか。景がみえます。涼しげです。(友遊)
☆42、自然に恵まれた土地の情景が浮かんできた。(知足)
<紙風船>
43小流れの石の不揃ひ秋立ちぬ
44秋ともし円周率の限りなく
45団栗や佳境に入りし村歌舞伎
☆43、ありふれた小流れに注ぐ視線。その水に立秋を感じる感性に共感。(風花)
☆44、円周率の数値が最近更新された 取り合わせが斬新な句である。(若葉)
☆44、簡潔な中にある宇宙の永遠の不思議。俳句ならではの表現。(うーむ)
☆45、村民の動きが見える様です。村芝居では如何。(白い鴉)
☆45、観てみたいです。中七が決まっています。(土曜日)
☆45、山々に囲まれた村。素朴な伝統を守る村の人々。季語の斡旋も良い。(奴)
<若葉>
46今朝の秋風にねばりの失せにけり
47千号に載す千句目の句秋灯
48とば口は踏み固めらる檪の実
☆46、風のねばりという表現が新鮮(狛犬)
☆46、秋風のさらりとしている気配が出て嬉しい。(杏)
☆46、(鴉の子)
<悠>
49立秋や二声のあと飛び立ちぬ
50山の水一杓掬ひ秋立ちぬ
51秋立つや二つ三つと星増ゆる
☆50、爽やかな感じが良く出ている。(紙風船)
☆50、夏とは違う匂いや冷たさに秋を感じられたのでしょうか。(句猫)
<青子>
52秋立ちてマリンブルーのシャツ仕舞ひけり
53茶葉ひらく刻(とき)数へをり秋立ちぬ
54袴脱ぎ檪樫の実無礼講
△52、字あまりにしてまで「けり」がいるのか?「シャツ仕舞ふ」では?(奴)
☆54、独創的な発想で、楽しい句です。(柊)
<句猫>
55秋立つや金星に後をつけられり
56秋灯し田舎道をひた走る
57団栗が名刺代わりや山の神
※55、「られり」は誤り。正しくは「らるる」。(世話役)
☆55、金星に後をつけられるという表現がおもしろい。(季彩)
☆56、暗い田舎道を、ひた走るがいい。暖かさと寂しさ。(友遊)
☆57、団栗が良く効いている。(白い鴉)
☆57、団栗が山の神の石碑に落ちていて名刺代わりとはユーモラスですね。(杏)
<知足>
58災害と戦禍も語り秋に入る
59秋灯や音せぬ碁盤長考す
60団栗や孫と数えて俄塾
☆59、何十手先まで読んでいるのかな?(季彩)
☆59、秋の夜の静かな感じがいい。(里穂)
<うーむ>
61秋立つや君は口癖だけ残し
62秋灯下こころしずめるために編む
63ねんねこの手より団栗ころがりぬ
☆61、今は傍にいない方の口癖を思出して懐かしむことってありますね。(句猫)
☆62、何かに集中すると心が静まる、特に秋の夜は(狛犬)
☆62、女にはそういうときがあります。同感。(友遊)
▽63、季重ね。上五を工夫すると楽しい句です。(白い鴉)
<梓>
64発掘の竪穴住居くぬぎの実
65秋立つや風の下りくる屋敷林
66秋灯や本にはさみし子の便り
☆64、堅穴住居とくぬぎの実がマッチしていると思う。(若葉)
☆64、土器時代の、豊な生活が思い浮かんだ。(青子)
☆66、手元に置いておきたい心情。(八目)
☆66、偶然見つけて、感慨に耽っている感じが良く出ている。(知足)
☆66、身近に置いてさりげない親子の距離感が出ている。(紙風船)
☆66、本に挟んであった便りを秋灯の下で開く感じが出ている。(泰二)
<出句集>
1団栗のことばころがる掌
2形なきものは壊れず秋灯
3秋立つやかすかに見ゆる風のいろ
4秋立つや影を重ねし船溜り
5陶製の釦いろいろ秋ともし
6どんぐりや硬貨を洗ふ水の音
7秋立ちて最小限の人となる
8秋灯に過ぎ去りし日々影光
9団栗の各々の顔我を見し
10行く足のはこびの遅き今朝の秋
11一人にはひとりのくらし秋灯
12団栗や昔はどこも子沢山
13秋の灯や亡き母見たり暗がりに
14秋の灯や財布の底の銭数え
15孫等去り団栗一つ残りけり
16立秋や音立てて噛む香の物
17どんぐりで終る団栗ばかりかな
18秋灯星のごとくにはるかなる
19今朝秋の厨に出羽の祈祷札
20これからが一人の時間秋ともし
21山の子に山の遊び場櫟の実
22秋立つや朝の散歩の距離のばす
23秋たちてまた明日ねと別れたる
24秋立ちて潮風乾いてきたりけり
25どんぐりやいくつになっても虎フアン
26秋灯下買ふても読まぬ哲学書
27縁ひとつ切れて歳寄る今朝の秋
28塀に寝る猫そよぎをり今朝の秋
29一冊の本とラジオや秋ともし
30秋灯や戻りし家に音あらず
31秋立つや漂うてゐる蔓の先
32人を待つナイフとフォーク秋灯
33大どんぐり一つ呉れたる別れかな
34立秋の月を掲げし森の梢
35クラス会果て秋の灯に帰りつく
36どんぐりの水面に落ちしこだまかな
37水底のごとき法堂秋灯
38立秋の僧連れてくる山の風
39秋立つや地球も少し傾けり
40秋めくや川風とどく美術館
41筆跡に父との逢瀬秋灯下
42ふるさとや団栗の降る父母の墓
43小流れの石の不揃ひ秋立ちぬ
44秋ともし円周率の限りなく
45団栗や佳境に入りし村歌舞伎
46今朝の秋風にねばりの失せにけり
47千号に載す千句目の句秋灯
48とば口は踏み固めらる檪の実
49立秋や二声のあと飛び立ちぬ
50山の水一杓掬ひ秋立ちぬ
51秋立つや二つ三つと星増ゆる
52秋立ちてマリンブルーのシャツ仕舞ひけり
53茶葉ひらく刻(とき)数へをり秋立ちぬ
54袴脱ぎ檪樫の実無礼講
55秋立つや金星に後をつけられり
56秋灯し田舎道をひた走る
57団栗が名刺代わりや山の神
58災害と戦禍も語り秋に入る
59秋灯や音せぬ碁盤長考す
60団栗や孫と数えて俄塾
61秋立つや君は口癖だけ残し
62秋灯下こころしずめるために編む
63ねんねこの手より団栗ころがりぬ
64発掘の竪穴住居くぬぎの実
65秋立つや風の下りくる屋敷林
66秋灯や本にはさみし子の便り